子供の睡眠不足が脳と体に与える影響についての話

健康を維持する上で、一番重要と言っても過言ではない「睡眠
そして、人間の一生で、一番愛おしい期間と言っても過言ではない「赤ちゃん

ということで、今回はそんな愛おしい赤ちゃん(赤ちゃんを対象にした研究はあまりないので子供とします)の睡眠時間に関してですね。
睡眠時間が短くなるとどうなってしまうのかについて、いくつかの研究(r1)(r2)(r3)をもとにご紹介しようかと。

目次

脳への影響

まずは赤ちゃんの睡眠時間が短いとどうなるのかなのですが、睡眠時間と脳に関して見た研究というのが2017年にオランダにあるエラスムス大学から出されました。(r1)
睡眠障害を患った子供の脳を調べた研究ですね。

研究の対象としては、エラスムス大学病院に来院した子供に、不眠症に対するアンケートをとって、不眠症であると判断された720名の生後2ヶ月から6歳までの子どもです。

この子どもたちにMRI画像を撮影したんですけれども、結果としては睡眠障害がないと判断された子どもと比較して、2歳の子供では6.3立方センチメートル、3歳では6.4立方センチメートル、6歳では7.3立方センチメートルも脳の体積が少なく、なんと脳全体の形にも影響が見られました。
つまり2歳以降の子供の睡眠障害というのは脳が小さくなり軽くなっているということです。

この子どもたちは、親が受けたアンケートで不眠症と診断された720名なので、一概に睡眠時間が何時間という記載はないんですけれども、睡眠時間に関しては、

0歳から1歳は
1日で最大17時間

1歳から5歳は
1日で10時間から14時間

は睡眠をとることを推奨しています。

また、この研究では脳のどこの部位に障害があるのかを見たんですが、有害な睡眠障害を持つ子どもというのは右背外側前頭前野の厚さが薄くなっていました。
この部分はですね、脳の前側の部分で、別名が前頭葉。

大人でもとても重要な部分と言われていまして。
運動神経物事を考える力集中力、また、感情を調節したり、人格を形成したりする、非常に重要な脳の領域です。よく認知症になったおじいちゃんおばあちゃんというのはこの前頭部分に萎縮が見られます。
それくらい前頭葉は重要ということですね。

ただし、この研究では、

  • 睡眠障害によって前頭葉が薄くなっているから寝れないのか
  • それとも寝れないから前頭葉が薄くなっているのか

については明らかになっていないのでなんとも言えませんが。ただし、成人を対象にした研究でも、睡眠不足によって前頭葉の働きが鈍くなるという研究もありますので、睡眠障害による脳への影響は大きいと思います。

身体への影響

あとはですね、脳以外にも睡眠障害というのは身体や体型にも影響を及ぼすということが2016年にサウサンプトン大学の研究(r2)で明らかになっています。

この研究は、3歳児587名を対象にして、睡眠時間とBMI、または脂肪量との関連を見た研究になります。
3歳の子どもの睡眠時間、夜寝ている時間と昼寝の時間を合わせた睡眠時間が、4歳になったときにBMI(体型)や脂肪量との関連を見た、とても面白い研究になります。個人的にこのような観察研究、大好き。

過去の論文からも、18歳の子供を対象にして睡眠時間が短いとBMIが高くなるということは明らかになっていたんですが、BMIだと単純に身長と体重で計算されますので、大雑把な肥満かどうかは分かるんですが、例えば筋肉量が多くて体重が重い人というのも肥満に分類されてしまうので、脂肪量はわからないんですね。

ただ今回の研究ではDXA法という脂肪量がわかる方法も用いていますので、本当に睡眠時間と肥満の関係が明らかになりました。

結果としては、性別や年齢、母親の喫煙歴、食事のスコアなども考慮しても、睡眠時間が短い子どもは脂肪量が多いという傾向がありました。つまり、睡眠時間が短い方が肥満率が高いということですね。

今回対象になった子どもたちの平均睡眠時間が男の子で11.4時間、女の子で11.5時間ですので、最低でもこのくらいの睡眠時間は、体型から考えても必要だと思います。

簡単に今までのところをまとめますと、睡眠時間が短くなるということは、

  • 脳の体積が小さくなって、子供の頃に成長するとされる性格の形成や集中力を司る前頭葉の働きが鈍くなる
  • 身体の面でも睡眠時間が短くなると体重が増加するだけでなく、脂肪量も増えてしまう

対策

では、このような睡眠不足を患った小さい子どもに対しては、睡眠を促すためにはどうすればいいのでしょうか。

睡眠を促す方法としてよく言われるのが、寝る90分前に入浴をして体温が下がるのを利用して入眠する方法や、ラベンダーの香りで副交感神経を刺激して入眠をスムーズにすることです。ただし、このような大人向けの対応と、特に0歳から3歳の子供の睡眠の質を上げる方法は一致しないことが多いそう。

ではどうするのかというと、赤ちゃんの睡眠の質を上げるためには、

  • スクリーン時間
  • 座っている時間
  • 身体活動時間

を調整するのが最も良いとされています。これは2020年の研究(r3)で明らかになったことです。

この研究では、活動時間と睡眠との関連について、メタ分析が実施されました。
メタ分析とは、今まで行われてきた睡眠に関する何百、何千という研究を批判的に吟味して、根拠のある論文だけを用いて結論を出すという方法でして。研究の中でもかなり信頼性が高いものと言えます。

こうした方法でまとめられた研究では、スクリーン時間が長いほど

  • 睡眠時間が短くなる
  • 夜の目覚めが多くなる
  • 睡眠の開始が遅くなる

など、睡眠の質が悪化することがわかっています。

スクリーン時間を減らす

特に、夜間のスクリーン時間は睡眠に悪影響を与えるため、避ける必要があります。詳しくは、就寝前のスマホが与える悪影響でも解説しているので気になった方はどうぞ。

適度に運動する

次に、座っている時間による睡眠への影響についてですが、0歳から1歳の子どもでは、座っている時間が長いほど睡眠には良くないという結果が出ています。ただし、1歳から3歳では座っている時間が長くなると、睡眠の質が向上し、夜の目覚めが減少することが分かっています。3歳から5歳では、中等度の運動が睡眠時間の質に良い影響を与えるのではとされています。3歳くらいからは動き回った方が体に良いよーということですね。

日光を浴びる

また、どの年代にも共通して効果があるのは、屋外に出すこと、つまり太陽の光を浴びさせることです。
太陽の光を浴びることは、すべての年代の子供にとって、睡眠の時間や質、夜間の覚醒の減少、寝つきの速さに効果があることがわかっています。これは、太陽の光を浴びることで「メラトニン」というホルモンが夜間に分泌され、このホルモンがスムーズな入眠を助けてくれるからです。メラトニンは、日光を浴びてから約14時間後に分泌されるため、できるだけ午前中の早い時間に日光を浴びておくと、夜スムーズに入眠することができるということ。

まとめ

子供の健康と発育を守るために、親は睡眠の質を高めるための環境づくりと、適切な生活習慣のサポートが必要ということですね。幸運なことに、私は小さい頃から母親に早く寝なさいと毎日21時に寝させられていたので今になってとても感謝しています。当時は、まだ寝たくないと駄々をこねるクソガキでしたが。

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